スロポ プラハ紙コンサート評
 


 
「ルドルフ大公記念館(ドボルザーク・ホール)」のパールトリオ」
 
   1997年3月19日、チェコ・フィルが活動の中心としている(ルドルフ大公記念館)のドボルザーク・ホールにパールトリオが登場しました。これはわが国でも最も人気のある音楽シリーズでいつもホールを満員にしてきた「チェコ・フィル室内楽シリーズ」に招かれたためです。

  パール・トリオは、遠く日本からやってきたエレガントなピアニスト、伊藤ルミ、わが国が世界に誇るヤナーチェク弦楽四重奏団で長く第一バイオリンを勤めたブルノ出身のトップ・バイオリニスト、ポフミル・スメイカル、それにチューリッヒを本拠地として活躍するチェリスト、ヨハネス・デーゲンによって構成されています。

 パール・トリオは1994年の結成当初からこの3名で活動しており、十分な練習と素晴らしい演奏をもって活躍を続けてきています。決して世界各地からその場限りの演奏のため演奏家を集めたトリオではありません。

 プラハでの演奏会プログラムは聴衆の期待に十分に応えるものでした。最初のハイドンによるピアノ三重奏曲第27番ハ長調(1975年初演)では、ピアニストが素晴らしい活躍をみせ、微妙な音楽性の表現、ピアノの持つ輝かしい響きを十分に表現していました。  もちろん二人の弦楽奏者が控えめに、しかししっかりと音楽を支えていたことはいうまでもありません。  

 次のブラームスのピアノ三重奏曲第3番ハ長調は、集中した情熱的な演奏が期待されていましたが、予想に反し、このトリオは曲の構成に忠実な解釈で、大仰なジェスチャーもなく堅実な演奏を展開しました。しかし、最後のチャイコフスキーの傑作、ピアノ三重奏曲ホ短調ではブラームスとは対象的に、 今まで隠し持っていた情熱を一気に噴出すような情熱的でロマンに満ちた演奏を披露しました。

 演奏を終え、この国際的なトリオは聴衆の惜しみない拍手と声援に送られてルドルフ大公記念館をあとにしました。それは素晴らしい感動を観客に与えた者のみが得られる栄冠であり、また、このトリオ自身もしっかりと成功をその手に握りしめたことを確信していたことでしょう。
 
 

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