テヌートとスタッカートの違いは?音の長さを操る弾き方のコツを伝授

楽譜の音符の上に書かれた棒線やドットの記号、正しく弾き分けられていますか。これらは「アーティキュレーション」と呼ばれ、音の切り方やつなぎ方を指定する大切な役割を持っています。テヌートとスタッカートの決定的な違いを理解することで、ピアノの演奏にメリハリが生まれ、より豊かな表情を奏でられるようになります。

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テヌートとスタッカートの違いが分かると音の表情が変わる

テヌートとスタッカートは、一見すると単なる「長さの指定」に思えますが、実は曲の雰囲気や感情を左右する重要なエッセンスです。この二つを意識的に使い分けることで、のっぺりとした演奏から卒業し、立体的な音楽を作ることができます。まずはそれぞれの記号が持つ本来の意味を整理しましょう。

テヌートは音をしっかり保つ指示

テヌート(Tenuto)は、イタリア語で「保つ」という意味を持っています。楽譜上では音符の上に短い横棒(-)で示されます。この記号があるときは、その音符が持っている本来の長さを、一滴も漏らさず最後まで丁寧に響かせることが求められます。

単に音を長くするだけでなく、「その音を大切に強調する」というニュアンスも含まれます。重厚感を出したい場面や、メロディの中で特に感情を込めたい音に付けられることが多く、次の音へ移る直前まで鍵盤を押さえ続けることで、芯のある豊かな響きを生み出します。

スタッカートは音を短く切る指示

スタッカート(Staccato)は、「切り離された」という意味のイタリア語です。音符の上に小さな点(・)で示されます。この指示があるときは、音符の長さの半分程度を目安に、音を短く切り離して演奏します。

音と音の間に隙間を作ることで、曲に軽快さやリズム感、時には緊張感を与えます。跳ねるような楽しさを表現するだけでなく、一音一音を際立たせてクリアに聴かせたい場面でも多用されます。音を「短くする」という行為そのものよりも、音を切った瞬間の「静寂」をどう作るかが、美しいスタッカートを奏でる鍵となります。

どちらも強弱より長さのコントロールが中心

初心者の方がよく間違えてしまうのが、テヌートを「強く弾く」、スタッカートを「弱く弾く」と思い込んでしまうことです。しかし、これらの記号の主目的はあくまで「音の持続時間(長さ)」のコントロールにあります。

テヌートだからといって常にフォルテで弾く必要はありませんし、スタッカートをピアノで繊細に弾く場面もたくさんあります。音の立ち上がりから消えるまでの時間をどうデザインするか。この「長さの意識」を持つだけで、音色のコントロール力が格段に向上し、作曲家の意図をより正確に表現できるようになります。

併用記号があるときは意味が変わる

楽譜には、テヌートとスタッカートが組み合わさった記号や、スラーの中にスタッカートが含まれる「メゾ・スタッカート」などが登場することがあります。これらが併用されているときは、単独の時とは少し意味が変わります。

例えば、横棒と点が重なった記号(ポルタート)は、「音は短く切るけれど、響きはやわらかく保つ」という、中間的な表情を求めています。記号が組み合わさることで、音の角を丸くしたり、逆に鋭くしたりといった、より細やかなニュアンスの指定になります。こうした複合的な指示を見逃さず、それぞれのバランスを考えることが、プロのような洗練された演奏への一歩となります。

テヌートとスタッカートが学べるおすすめ解説サイト・資料

音楽記号の解釈を深めるためには、信頼できる資料にあたることが大切です。ここでは、正しい知識を視覚的・論理的に学べるおすすめのサイトを紹介します。

ヤマハ「楽譜の読み方」音楽記号の解説

日本の音楽教育を支えるヤマハが提供する、初心者向けの非常に分かりやすい解説ページです。

項目内容
特徴図解が豊富で、子どもから大人まで直感的に理解できる。
メリット基本的な記号の意味を日本語で正しく把握できる。
公式サイトヤマハ 楽譜の読み方

Wikipedia(Tenuto / Staccato)

各記号の歴史的な背景や、時代による解釈の変遷まで詳しく知りたいときに便利です。

項目内容
特徴辞書的な正確さと、専門的な背景知識が網羅されている。
メリットアーティキュレーションの全般的な知識を深められる。
公式サイトWikipedia(Tenuto)

musictheory.net(Articulation の基礎)

世界中の音楽学生が利用する、アニメーションを用いた理論学習サイトです。

項目内容
特徴視覚的なグラフで音の長さの違いを学べる。
メリット英語での表記にも慣れることができ、グローバルな学習に役立つ。
公式サイトmusictheory.net

Open Music Theory(Articulation のまとめ)

大学レベルの高度な音楽理論をオープンリソースとして公開しているサイトです。

項目内容
特徴より専門的な演奏解釈のヒントが記載されている。
メリット記号が音楽全体の構造にどう関わるか深く学べる。
公式サイトOpen Music Theory

IMSLP(記号が多い譜面を確認できる)

パブリックドメインの楽譜ライブラリで、名曲の原典版などを閲覧できます。

項目内容
特徴ショパンやベートーヴェンなど、巨匠たちの記号の使い方が分かる。
メリット実際の楽曲の中で記号がどう配置されているか分析できる。
公式サイトIMSLP公式

MuseScore Learn(楽譜記号の学習)

楽譜作成ソフトのコミュニティが運営する、実践的な学習プラットフォームです。

項目内容
特徴ソフト上で記号を入力し、音の変化をリアルタイムで聴ける。
メリット聴覚と視覚を組み合わせて記号の効果を実感できる。
公式サイトMuseScore 公式

テヌートとスタッカートを弾き分けるコツと注意点

理論が分かったら、次はピアノの鍵盤でそれをどう表現するかが重要です。指先の感覚や体の使い方を少し変えるだけで、記号の指示通りの魅力的な音色が出せるようになります。

テヌートは離鍵を遅らせて音を残す

テヌートを弾くときは、鍵盤を「叩く」のではなく「深く置く」イメージを持ちましょう。指先を鍵盤に密着させ、腕の重みをしっかりとのせます。

最大のコツは、次の音を弾く直前まで指を離さない「離鍵(りけん)」のタイミングです。音が途切れないように粘り強く鍵盤を保持し続けることで、豊かなレガートに近いテヌートが生まれます。音が細くならないよう、最後まで響きを支え続ける意識を持ってください。

スタッカートは跳ねずに軽く切る

スタッカートは「跳ねる」イメージが強いですが、指を鍵盤から高く跳ね上げすぎると、打鍵音が雑になったりリズムが崩れたりします。理想的なのは、鍵盤から指を離すスピードを速くすることです。

熱いストーブに触れたときのように、打鍵した瞬間に指をスッと抜く感覚で弾いてみましょう。鍵盤の底まで押し切らず、浅い位置で音を切り離すイメージを持つと、軽やかで透明感のあるスタッカートになります。指先の神経を集中させ、音の切れ際を美しく整えましょう。

ペダルは記号を消さない範囲で使う

ペダル(ダンパーペダル)の使用には細心の注意が必要です。特にスタッカートの場面でペダルを深く踏んでしまうと、せっかく切り離した音がすべてつながってしまい、記号の意味がなくなってしまいます。

スタッカートの箇所ではペダルを離すか、響きをわずかに残す程度の「ハーフペダル」を検討してください。逆にテヌートでは、音の持続を助けるためにペダルを効果的に使うことができます。耳を澄ませて、記号が求めている「長さ」がペダルによって邪魔されていないか、常にチェックする習慣をつけましょう。

速い曲は指先より手首の動きが重要

テンポの速い曲でスタッカートやテヌートが出てくる場合、指先だけの力で対応しようとすると腕がすぐに疲れてしまいます。そこで重要になるのが「手首の柔軟性」です。

スタッカートでは手首をしなやかなバネのように使い、小刻みな振動を指先に伝えます。テヌートでは手首をやわらかく沈み込ませて、音の衝撃を吸収しながら重さを伝えます。手首を固めず、リラックスした状態でコントロールすることで、速いフレーズの中でも一音一音に意図した表情をつけることができます。

テヌートとスタッカートを使い分けるまとめ

テヌートとスタッカートは、音楽に「息づかい」を与える魔法の指示です。音をしっかり保つテヌートと、軽やかに切り離すスタッカート。この対照的な二つを弾き分けることで、あなたの演奏はよりダイナミックで説得力のあるものへと進化します。

ヤマハの解説サイトやIMSLPの楽譜を参考に、作曲家がなぜその記号を選んだのかを想像してみてください。指先のタッチや離鍵のタイミング、そしてペダル操作にまで意識を向けることで、ピアノはもっと饒舌に語り始めます。次の練習では、一音ごとの「長さ」にこだわって、曲に新しい命を吹き込んでみてくださいね。

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この記事を書いた人

ピアノの弾き方だけでなく、音の作り方そのものに興味がある人へ向けて情報を発信しています。コード進行やメロディづくりのコツも詳しく解説します。ひとつの曲を深く味わえるようになったり、自分のフレーズが生まれやすくなったりする、そんなきっかけをお届けします。

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