音楽用語のritはどう弾く?意味や効果的な速度の変化と自然に聴かせるコツ

楽譜の途中で見かける「rit」という文字。これは音楽に豊かな表情を与えるための大切な魔法の言葉です。急に止まるのではなく、余韻を残しながら心地よく速度を落としていくことで、曲の終わりや場面の切り替えを美しく演出できます。正しい意味と、演奏を魅力的に見せるための具体的なコツを学んでいきましょう。

目次

音楽用語のritを見たらテンポはどう変わる?

ritは「ritardando(リタルダンド)」の略称です。これが出てきたら、それまでの一定のテンポを緩めて、だんだんと速度を落としていく必要があります。単に遅くするだけでなく、音楽が自然に呼吸を整えていくようなイメージを持つことが大切です。

ritは「だんだん遅く」の合図

リタルダンドは、音楽に「ため」や「余韻」を作るための指示です。例えば、お話の最後で声を少しずつゆっくり落として、余韻を残しながら締めくくる様子に似ています。曲の終わりだけでなく、フレーズが一段落して次の場面へ移る前の「橋渡し」としてもよく使われます。

大切なのは「だんだん」という言葉です。ritと書いてある場所でいきなりガクンと遅くするのではなく、坂道をゆっくり下るように、滑らかにテンポを落としていくのがポイントです。聴いている人が「あ、音楽が心地よく収まっていくな」と感じられるような変化を目指しましょう。

どのくらい遅くするかの目安

どの程度遅くすれば良いのかは、楽譜に具体的な数字が書いていない限り、演奏者の解釈に任されています。基本的には、その曲の雰囲気や前後のテンポ、そしてフレーズの長さに合わせます。活発な曲ならほんの少しの変化で十分ですし、ゆったりした悲しい曲なら思い切って時間をかけることもあります。

迷ったときは、そのフレーズの最後の音が一番心地よく響く速さをゴールに設定してみてください。そこから逆算して、少しずつブレーキをかけていくようにすると、自然な速度変化になります。先生やプロの演奏を聴いて、どのあたりからどの程度減速しているかを参考にしてみるのも良い方法です。

rallやrit.との違い

似た用語に「rall.(ラレンタンド)」がありますが、こちらは「速度を落としながら、さらに弱めていく」という、消え入るようなニュアンスが含まれることが多いです。一方のリタルダンドは、主に速度の変化に焦点を当てた言葉です。

また、「rit.」と書かれることもありますが、これはリタルダンドの略である場合と、「ritenuto(リテヌート)」の略である場合があります。リテヌートは「すぐに速度を落とし、その遅さを維持する」という意味なので、リタルダンドとは少しニュアンスが異なります。前後の文脈から、滑らかに遅くするのか、ガツンと遅くするのかを判断する必要があります。

終わりの戻し方と次の入り方

ritで遅くしたテンポを元に戻すときは、多くの場合「a tempo(ア・テンポ)」という指示がセットで出てきます。これは「元の速さで」という意味です。ritでたっぷり時間を取った後、a tempoで元のリズムに戻る瞬間は、音楽が再び活気づくとてもドラマチックな場面になります。

もし戻す指示がないまま曲が終わる場合は、最後の音まで丁寧に減速し、音が消えた後の静寂まで含めて演奏だと捉えましょう。逆に、次の段落でテンポが変わる場合は、ritをその変化への準備期間として使い、次の新しいメロディが自然に始められるように速度を調整します。

ritがわかるおすすめ辞典・練習ツール

音楽用語を正しく理解し、演奏に活かすために役立つリソースを紹介します。

ツール・リソース名特徴参照先リンク
ヤマハ 音楽用語集ピアノ学習者にとって必須の基本用語がPDFで分かりやすくまとまっています。ヤマハ音楽用語一覧
Wikipedia Ritardando用語の語源や歴史的な背景まで詳しく知りたい時に便利です。Wikipedia (ritardando)
Musicca Tempo termsインターネット上でテンポ用語の意味を素早く検索できる学習サイトです。Musicca公式サイト
ピティナ 音楽用語解説ピアノ専門の視点から、より深い表現方法や解釈を学ぶことができます。ピティナ・ピアノ曲事典
無料メトロノームアプリ自分の感覚だけでなく、数値で速度の変化を体感する練習に最適です。各種アプリストア(Smart Metronomeなど)

無料メトロノームアプリで体感練習

リタルダンドの感覚を養うために、メトロノームアプリを活用してみましょう。一定のテンポで鳴らしながら、そのクリック音を無視して少しずつ自分の打鍵を遅らせていく練習をします。

自分がどのタイミングで、どのくらいテンポを動かしているのかを客観的に知ることができます。アプリの中には、設定した小節数で自動的にテンポを落としてくれる機能を持つものもあり、理想的な減速のカーブを耳で覚えるのに非常に役立ちます。

ritを自然に聴かせる弾き方のコツ

リタルダンドはただ遅く弾けば良いというわけではありません。聴き手に「自然だな」と思わせるには、いくつかの技術的なポイントを押さえる必要があります。

右手と左手のズレを防ぐ

テンポを落とし始めると、無意識にメロディ(右手)だけが先に遅くなり、伴奏(左手)が取り残されてしまうことがあります。これが起きると、演奏がバラバラに聞こえてしまいます。

遅くするときこそ、左手のベース音や和音のタイミングをしっかり意識しましょう。左右の手が常に「縦の線」で揃っていることを確認しながら、一緒に歩幅を広げていく感覚で弾くと、安定感のある美しいリタルダンドになります。

フレーズの山で減速する位置

どこから遅くし始めるかが、表現の鍵を握ります。多くの場合、フレーズの最後の1〜2小節にかけて緩やかに減速します。特に、メロディが一番高い音(頂点)を通り過ぎて、結びに向かうタイミングでブレーキをかけると、非常に自然に聞こえます。

楽譜に「rit.」と書いてある場所からすぐに極端に遅くするのではなく、最初の数音は変化を抑え、終わりに向かって徐々に減速の幅を大きくしていく「しなり」を持たせると、プロのような仕上がりになります。

音量と表情は別で考える

「遅くする=小さくする」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。堂々と大きな音を保ったまま、重厚にリタルダンドをかける場面もたくさんあります。速度の変化と音量の変化(クレッシェンドやデクレッシェンド)を切り離して考えられるようになると、表現の幅が広がります。

その曲が、静かに幕を閉じたいのか、それとも壮大なフィナーレを迎えたいのか。その目的に合わせて、音の強さをコントロールしながらテンポを操れるよう練習してみましょう。

よくある失敗と直し方

よくある失敗は、リタルダンドの途中でテンポが不安定になり、カクカクとした動きになってしまうことです。これは、1音ごとに速度を考えすぎているために起こります。

解決策は、細かな音符ではなく、1拍ごと、あるいは1小節ごとの大きな流れでテンポを感じることです。また、声に出してメロディを歌いながら弾くことも有効です。自分の呼吸に合わせて歌えば、自然と滑らかなリタルダンドの曲線が描けるようになります。

ritを味方にすると演奏がぐっと歌う

リタルダンドをマスターすることは、ピアノで「歌う」ことへの第一歩です。一定のテンポで正確に弾く技術も素晴らしいですが、そこに自由な速度の変化が加わることで、音楽に人間らしい感情が宿ります。

ヤマハの用語集やメトロノームアプリなどのツールを使いながら、まずは自分の「rit」がどんな形をしているか耳で確かめてみてください。滑らかで心のこもったリタルダンドができるようになれば、あなたの演奏はより聴き手の心に深く響くものになるはずです。

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この記事を書いた人

ピアノの弾き方だけでなく、音の作り方そのものに興味がある人へ向けて情報を発信しています。コード進行やメロディづくりのコツも詳しく解説します。ひとつの曲を深く味わえるようになったり、自分のフレーズが生まれやすくなったりする、そんなきっかけをお届けします。

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