アップライトピアノの運び方は?専門業者への依頼と安全に移動するためのコツ

大切なアップライトピアノを移動させる際、一番に考えたいのは安全面です。重さが200kg以上ある繊細な楽器を運ぶには、専門的な知識と技術が欠かせません。無理をして自分たちで動かそうとせず、プロの力を借りることで、大切な住まいや楽器を守り、スムーズに設置を完了させることができます。

目次

アップライトピアノの運び方は専門業者に任せるのがいちばん安心

アップライトピアノを運ぶのは、単に重い荷物を移動させるのとはわけが違います。内部には何千もの精密な部品が詰まっており、少しの衝撃や傾きが故障の原因になりかねません。ここでは、なぜ専門業者に任せるべきなのか、自分で行う際のリスクや準備の重要性について詳しく見ていきましょう。

自分で動かすリスクを知る

アップライトピアノの重量は、小型のものでも200kg、大型のものになると250kgを超えます。この重さを一般の方が扱うのは非常に危険です。まず考えられるのが、作業者自身の怪我です。無理な姿勢で持ち上げようとして腰を痛めるだけでなく、万が一バランスを崩して足元に落としてしまえば、取り返しのつかない大事故に繋がります。

また、住宅へのダメージも無視できません。ピアノの脚にはキャスターがついていますが、これは設置場所を数センチ単位で微調整するためのもので、家の中を転がして移動させるためのものではありません。そのまま無理に動かすと、フローリングに深い傷がついたり、床材がピアノの重さに耐えきれず凹んだりする恐れがあります。

さらに、ピアノ内部への影響も深刻です。ピアノは木材、フェルト、金属弦などで構成された極めて精密な楽器です。運搬中に無理な振動や衝撃を与えると、鍵盤の動作を司る「アクション」という機構が狂ったり、外装にひびが入ったりするリスクがあります。専門業者は専用の機材と複数人のスタッフによる連携で、これらのリスクを最小限に抑えます。数万円の費用を惜しんで、家や高価な楽器、自分自身の体を傷つけてしまうリスクを考えると、プロに依頼するのが最も賢明な判断です。

室内移動と引っ越しで準備が変わる

ピアノの運搬には、大きく分けて「室内での移動」と「住居をまたぐ引っ越し」の2パターンがあります。隣の部屋へ移動させるだけの室内移動であっても、アップライトピアノの場合は専門業者の手が必要になります。先述の通り床の保護が必要なほか、ドアの枠を通過できるか、床の補強が必要ないかといった建築的な視点でのチェックが欠かせないからです。

一方、引っ越しの場合はさらに準備が複雑になります。長距離の移動では、トラックの振動や移動中の温度・湿度変化がピアノに影響を与えます。特に夏場の高温や冬場の乾燥は、木製部品の歪みを引き起こす原因となるため、専門業者は空調管理ができる車両を使用したり、丁寧な梱包を施したりします。

どちらの場合も、事前に「移動先のスペース」を確保しておくことが大切です。室内移動なら家具の配置換えを済ませ、引っ越しなら新居の設置場所に十分な広さと床の強度があるかを確認しておきます。また、引っ越し業者に一括で頼む場合でも、ピアノだけは提携している「ピアノ専門運送会社」が担当することが一般的です。大切な楽器の扱いについて、担当者が専門的な知識を持っているか事前に確認しておくと安心です。

搬出入の経路を先に確認する

ピアノを安全に運ぶために最も重要なのが、搬出・搬入経路の確認です。ピアノは分解して運ぶことができないため、そのままのサイズで玄関や廊下を通る必要があります。

確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 玄関ドアの幅と高さ
  • 廊下の幅と角を曲がれるスペース
  • エレベーターのサイズ(奥行きが足りるか)
  • マンションの共用部の養生ルール

特に古い住宅やメゾネットタイプの物件では、階段の幅が狭くて通れないケースが多くあります。その場合は、窓からクレーンで吊り上げる「吊り作業」が必要になります。当日になって「通らない」という事態になると、追加の作業料金が発生したり、最悪の場合は運び込みができず持ち帰りになったりすることもあります。

不安な場合は、業者の下見サービスを利用するのがおすすめです。プロの目で見れば、一見難しそうな経路でも「脚を外せば通る」「この角度ならいける」といった判断を正確に下してくれます。また、経路にある手すりや照明器具が障害になることもあるため、事前に外せるものは外しておくといった段取りもスムーズな運搬に繋がります。

運搬後に調律が必要になる

ピアノを無事に運び終えて設置が完了しても、すぐに元の音で弾けるとは限りません。運搬による振動や、設置場所の環境(温度・湿度)の変化によって、必ずといっていいほど音程が乱れます。これを整えるために、運搬後は「調律」が必要不可欠です。

ただし、設置した当日に調律を行うのは避けるべきです。ピアノが新しい環境に馴染むまでには時間がかかります。木材がその場所の湿度に順応し、弦の張力が安定するまで、少なくとも1週間から2週間ほど待ってから調律師を呼ぶのが理想的です。この期間を置くことで、調律後の音が狂いにくくなり、より長く安定した状態を保つことができます。

多くのピアノ運搬専門業者は、調律師と提携しているか、自社で調律サービスを提供しています。運搬とセットで予約しておくと、スケジュールの管理が楽になります。運搬直後のピアノは、移動のストレスで非常にデリケートな状態です。新しい場所で長く良い音を響かせるために、移動と調律は必ずセットで考えておきましょう。

アップライトピアノ運搬のおすすめ依頼先と相談窓口

ピアノの運搬をどこに頼めばいいか迷っている方のために、信頼できる専門業者やメーカーの窓口をご紹介します。ピアノの扱いに慣れたプロに依頼することで、トラブルを防ぎ、安心して設置を任せることができます。

アートセッティングデリバリー(ピアノ・楽器の専門輸送)

引越業界大手のアート引越センターグループが提供する、ピアノや精密機器の専門輸送サービスです。引越と同時に依頼できる手軽さと、専門業者ならではの丁寧な扱いを両立しています。

サービス名アートセッティングデリバリー
特徴全国ネットワークを活かしたスムーズな手配
対応範囲室内移動、長距離輸送、調律、クリーニング等
公式サイトアートセッティングデリバリー 公式

ヤマハピアノサービス(引き取りや運搬の相談)

ヤマハ製のピアノを熟知した専門スタッフが、運搬や修理、買取の相談に乗ってくれます。ヤマハの基準に沿った丁寧な作業が期待できるため、ヤマハユーザーに最適です。

サービス名ヤマハピアノサービス
特徴メーカー直営ならではの安心感と高い技術力
対応範囲運搬、調律、修理、消音ユニット取付、買取等
公式サイトヤマハピアノサービス 公式

ヤマハ特約楽器店(運送業者の紹介相談)

全国各地にあるヤマハの正規代理店(楽器店)でも、ピアノ運搬の相談を受け付けています。地元の信頼できる運送業者を紹介してもらえるため、地域に密着した柔軟な対応が可能です。

サービス名ヤマハ特約楽器店(各店舗)
特徴地域に根ざしたサポートと、購入後のアフターケア
対応範囲運搬業者の紹介、調律師の派遣等
公式サイトヤマハ ピアノ関連サービス検索

ピアノ運送株式会社(ピアノ専門の運送会社)

1910年創業の歴史を持つ、日本最大級のピアノ専門運送会社です。ピアノの特性を知り尽くした「運ぶプロ」が、高度な技術でどんな場所へも安全に届けます。

サービス名ピアノ運送株式会社
特徴業界屈指の技術力でクレーン作業等の難所にも対応
対応範囲運搬、保管、調律、修理、処分等
公式サイトピアノ運送株式会社 公式

ニシリクグループ(ピアノ輸送・設置対応)

ヤマハの物流パートナーとして長年実績を積んできた輸送グループです。ピアノの配送設置をメイン事業としており、全国的な配送網と専門スタッフを抱えています。

サービス名ニシリクグループ
特徴物流のプロとしての正確な配送と設置ノウハウ
対応範囲全国配送、納品設置、オフィス家具等
公式サイトニシリク株式会社 公式

河合楽器 製品サービス(運搬を含むサポート窓口)

カワイピアノのユーザーに向けた、総合的なサポート窓口です。カワイピアノの構造を熟知したスタッフが、運搬から調律、修理までを一括してサポートしてくれます。

サービス名河合楽器 製品サービス(サポート)
特徴自社製品に最適な扱いとメンテナンス提案
対応範囲運搬相談、アフターサービス、調律等
公式サイトカワイ ピアノサポート 公式

アップライトピアノを安全に運ぶための段取りと注意点

依頼先が決まったら、次は当日に向けた具体的な段取りを進めましょう。業者が作業しやすい環境を作っておくことは、作業時間の短縮だけでなく、思わぬ事故を防ぐことにも繋がります。細かい部分までチェックを行い、万全の状態で当日を迎えましょう。

玄関や廊下の幅を測っておく

見積もりを依頼する前に、必ず自分で主要な箇所の寸法を測っておきましょう。アップライトピアノの標準的なサイズは、横幅が約150cm、高さが120〜130cm、奥行きが60cm程度です。これに作業スタッフの手が入る隙間や、台車の高さを考慮する必要があります。

測るべき場所は「最も狭い部分」です。玄関ドアそのものの幅だけでなく、ドアが90度しか開かない場合は、ドアノブや郵便受けが突き出している分を差し引いた実質的な有効幅を測ってください。廊下の曲がり角では、ピアノの長さを考慮して旋回できるスペースがあるかどうかが重要になります。これらの数値をあらかじめ業者に伝えておくことで、電話やメールでの見積もりが正確になり、当日のトラブルを防ぐことができます。

床や壁を傷つけない養生をする

専門業者は、運搬時に「キルティングパッド」などの専用資材でピアノ本体や壁を保護してくれますが、自分でもできる準備があります。特に新築物件や賃貸物件の場合、小さな傷も避けたいものです。

搬入経路に傷つきやすい家具や置物がある場合は、事前に別の部屋へ避けておきましょう。また、設置場所の床がフローリングの場合は、ピアノの重みで凹まないよう「インシュレーター(脚受け)」や「敷板」を用意しておきます。最近では、防音効果や耐震効果を兼ね備えた高機能なインシュレーターも販売されています。これらはピアノを置いてからでは設置が難しいため、運搬当日に業者に渡して取り付けてもらうのが最もスムーズです。業者によっては養生用の資材を貸し出してくれることもあるため、事前に相談しておくと良いでしょう。

階段や段差は追加費用になりやすい

ピアノ運搬の料金設定は、基本料金に加えて「作業環境」による加算が一般的です。最も大きな変動要素が、段差や階数です。エレベーターが使えず階段で運ぶ場合は、1階上がるごとに「階段作業料」が発生します。

また、2階以上への搬入で、外からのクレーン吊り上げや、窓からの手吊り作業が必要な場合も別途費用がかかります。さらに、トラックを玄関のすぐ前に停められない場合の「横持ち(歩き)作業」や、狭い場所での「特殊作業」も料金に影響します。見積もり時には、戸建てかマンションか、階数は何階か、エレベーターの有無、段差の有無を詳細に伝えることが大切です。曖昧な情報を伝えてしまうと、当日になって高額な追加料金を請求される原因になります。正確な情報を開示し、納得のいく見積もりを複数社から取ることが、コストを抑えるコツです。

設置後は音の変化をチェックする

ピアノが所定の位置に置かれたら、まずは全ての鍵盤を叩いて音が出るか、ペダルの動きに違和感がないかを確認しましょう。運搬中の強い振動で、内部の部品が外れたり緩んだりしている可能性がゼロではないからです。

設置直後の音に「うなり」や「不快な響き」が混ざっていることがありますが、これは先述の通り環境変化によるものが大半です。湿度の変化により木材が膨張・収縮し、弦の張力が変わってしまうため、設置場所の湿度は50%前後を保つように心がけてください。

また、設置場所の床が水平でないと、ピアノの重みで本体に歪みが生じ、特定の音が止まりにくくなるなどの不具合が出ることがあります。業者が水平を確認しながら設置してくれますが、自分でも演奏してみて違和感がないか、ピアノがガタついていないかをチェックしてください。何か異常を感じたら、後日依頼する調律師に詳細を伝えることで、的確な調整をしてもらえます。

アップライトピアノは準備と依頼先選びで運搬がスムーズになる

アップライトピアノは、代々受け継がれることもある非常に価値の高い楽器です。その運搬は一生のうちに何度も経験することではありませんが、だからこそ「安さ」だけで選ばず、実績のある専門業者を頼ることが大切です。事前の正確な寸法測定と、余裕を持ったスケジュール、そして設置後の適切なメンテナンス。これらをしっかりと行うことで、大切なピアノは新しい場所でも再び美しい音色を奏でてくれます。

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この記事を書いた人

ピアノの弾き方だけでなく、音の作り方そのものに興味がある人へ向けて情報を発信しています。コード進行やメロディづくりのコツも詳しく解説します。ひとつの曲を深く味わえるようになったり、自分のフレーズが生まれやすくなったりする、そんなきっかけをお届けします。

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