作詞と作曲、どっちが先が正解なのか迷う人は多いですが、実は「目的」と「得意な入口」で最適解が変わります。メロディ先行なら歌いやすさやノリが決まりやすく、鼻歌から一気にサビまで進むこともあります。歌詞先行なら世界観や物語が強くなり、言葉の力で曲全体の方向が定まります。同時進行は統一感が出やすい反面、手順が曖昧だと止まりやすいのも特徴です。この記事では、それぞれの作り方のメリット・つまずきポイントを整理しながら、DAWやボイスメモなどのツール活用、サビ先行の組み立て方まで紹介します。
作詞と作曲はどっちが先でも正解で曲の作りやすさが変わる
「作詞と作曲、どっちから始めるべき?」という疑問は、初心者が最初にぶつかる壁の一つです。結論から言えば、どちらから始めても正解です。しかし、どちらを先にするかによって、曲の雰囲気や制作の難易度、そして完成した時の「聴こえ方」が大きく変わってきます。それぞれの特徴を知り、今の自分に合った方法を選ぶことが大切です。
メロディ先行は歌いやすさが決まりやすい
「曲先(きょくせん)」と呼ばれる、メロディを先に作る方法は、現在のポップスシーンにおいて最も一般的なスタイルです。この方法の最大のメリットは、音楽的な心地よさを優先できる点にあります。リズムに乗ったキャッチーなフレーズや、耳に残るサビを作りやすいため、聴く人が自然と口ずさみたくなるような楽曲に仕上がりやすい傾向があります。
メロディを先に作る場合、鼻歌でなんとなく歌ったフレーズをボイスメモに録音したり、楽器を弾きながらコード進行に合わせて音を探ったりして進めます。音楽の骨組みがしっかりしているため、歌詞を乗せる段階になっても、リズムが崩れたり、歌いにくい音程になったりするリスクを減らせます。「ノリが良い曲」「サウンドがかっこいい曲」を目指すなら、メロディ先行がおすすめです。
一方で、デメリットとしては、すでに決まったメロディの音数(音節)に合わせて言葉を選ばなければならないという制約が生まれることです。言いたい言葉が長すぎてメロディに入りきらなかったり、逆にメロディが余ってしまったりすることがあります。そのため、パズルのように言葉を当てはめていく語彙力や、音の響きを重視した言葉選びのセンスが求められます。
歌詞先行は世界観と物語が強くなる
「詞先(しせん)」と呼ばれる、歌詞を先に書く方法は、伝えたいメッセージや物語が明確にある場合に非常に有効です。フォークソングやバラード、あるいは演劇的な楽曲など、言葉の意味を深く届けたいジャンルでよく用いられます。この方法の良さは、言葉のイントネーションやリズムがそのままメロディに反映されるため、日本語として自然で、感情がダイレクトに伝わる曲になりやすいことです。
歌詞を先に書く場合、まずはノートやスマホに詩を書き留めることから始めます。字数制限がないため、情景描写を細かく入れたり、複雑な心情を丁寧に綴ったりと、表現の自由度が高くなります。完成した歌詞を朗読してみると、自然と抑揚がつきますが、その抑揚をそのままメロディとして発展させていくような作り方ができます。
ただし、音楽的な構造を作るのが少し難しくなる側面があります。歌詞の構成がバラバラだと、Aメロやサビといった区切りがつけにくくなり、全体的に抑揚のない、お経のような曲になってしまうこともあります。これを防ぐためには、作詞の段階で「ここはサビだから少し文字数を減らしてリズムを出そう」といった具合に、ある程度の楽曲構成を意識して書く工夫が必要です。
同時進行は曲の統一感が出やすい
ギターやピアノで弾き語りをしながら、コードを鳴らした瞬間にメロディと言葉が同時に出てくる、というスタイルです。「同時進行」で作られた曲は、歌詞とメロディの結びつきが非常に強く、無理のない自然な一体感が生まれます。シンガーソングライターに多い手法で、その瞬間の感情やインスピレーションがそのままパッケージされるため、生々しいエネルギーを持った楽曲になりやすいのが特徴です。
この方法では、特定のコードの響きから「悲しい」と感じて悲しい言葉が出たり、アップテンポなリズムから元気な言葉が出たりと、音と言葉が相互に作用し合います。そのため、「明るい曲調なのに歌詞は暗い」といったちぐはぐな状態になりにくく、一貫した世界観を作りやすいというメリットがあります。また、最初から歌いながら作るので、歌いにくいフレーズが生まれることもほとんどありません。
難しい点としては、楽器を演奏しながら即興的に作っていくスキルがある程度必要になることです。また、勢いで作れる反面、後で見返すと構成が単調になっていたり、似たようなフレーズばかり繰り返していたりすることもあります。ある程度形になったら、冷静に俯瞰して推敲する時間を設けることで、より完成度の高い作品に仕上げることができます。
迷ったら得意な方から始めると進む
「結局どっちがいいのか選べない」という場合は、単純に自分の得意な方、あるいは「今、思いついている方」から始めるのが一番の近道です。普段からポエムや日記を書くのが好きなら歌詞から、楽器を触るのが好きならメロディから始めてみましょう。無理に苦手な方から始めようとすると、最初のワンフレーズすら出てこずに挫折してしまう原因になります。
また、曲によってアプローチを変えるのも有効な手段です。「今回はどうしてもこのフレーズを言いたい」という時は詞先で、「ダンスできるような曲を作りたい」という時は曲先で、というように使い分けることで、作風の幅も広がります。プロの作家でも、ケースバイケースで手法を変えることは珍しくありません。
重要なのは、一度決めたら最後までその方法でやらなければならない、という決まりはないことです。歌詞から書き始めたけれど、途中で良いメロディが浮かんだからそっちを優先して歌詞を直す、といった柔軟な変更はいつでも可能です。まずは手を動かし始め、創作のスイッチを入れることを最優先にしてください。
作詞作曲をスムーズに進めるおすすめツール6選
今はパソコンやスマートフォンがあれば、楽器が弾けなくても、楽譜が読めなくても曲を作れる時代です。初心者の創作を助けてくれる便利なツールやアプリを活用することで、アイデアを形にするスピードが格段に上がります。ここでは、制作の各工程で役立つ定番のツールを紹介します。
作曲用のDAWソフト(GarageBand・Cubaseなど)
DAW(ディーエーダブリュー)とは、パソコンやスマホで録音、編集、打ち込みなどを行う総合音楽制作ソフトです。これがあれば、ドラムやベースなどの伴奏を一人で作ることができます。MacやiPhoneユーザーなら無料の「GarageBand」が最強の入門ツールです。本格的に始めたいならプロ御用達の「Cubase」などが選択肢に入ります。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ソフト名 | GarageBand(ガレージバンド) |
| 特徴 | Apple製品に標準搭載。直感操作でプロ並みの音作りが可能 |
| 公式サイト | GarageBand (Apple) |
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ソフト名 | Cubase(キューベース) |
| 特徴 | 日本でのシェアが高い高機能DAW。初心者向けグレードもあり |
| 公式サイト | Steinberg Cubase |
コード進行が作れるアプリ(Chord系アプリ)
「メロディは浮かぶけど、伴奏のコードがわからない」という悩みを解決してくれるのが、コード進行支援アプリです。画面上のパッドをタップするだけで、相性の良いコードを提案してくれたり、鳴らしてくれたりします。音楽理論がわからなくても、耳で聴いて「いいな」と思う響きを選んでいくだけで、曲の骨組みが完成します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| アプリ名 | Suggester |
| 特徴 | コード進行の作成・試聴に特化。相性の良い次コードを提案 |
| リンク | App Store (Suggester) |
ボイスメモアプリ(メロディの録音)
ふとした瞬間に降りてきたメロディは、数秒後には忘れてしまうものです。すぐに録音できるボイスメモは、作曲家の命綱です。スマホ標準のアプリで十分ですが、フォルダ分け機能や、高音質設定ができるものを使うと、後でアイデアを整理する時に便利です。恥ずかしがらずに、思いついたら即録音する習慣をつけましょう。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| アプリ名 | ボイスメモ(標準搭載) / PCM録音 など |
| 特徴 | 起動が早くワンタップで録音開始できるものがベスト |
| 備考 | iOS/Android標準アプリでまずは十分 |
作詞メモに強いノートアプリ(Notion・Evernote)
歌詞の断片や、曲の構成、テーマのアイデアを書き留めるためのデジタルノートです。特に「Notion」や「Evernote」は、スマホとPCで同期ができるため、外出先で思いついたフレーズをスマホに入力し、帰宅後にPCで推敲するといった使い方がスムーズにできます。歌詞のバージョン管理もしやすく、制作過程を残しておけます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| アプリ名 | Notion(ノーション) |
| 特徴 | 多機能メモ。データベース機能で作詞ネタの管理もしやすい |
| 公式サイト | Notion |
仮歌づくりに便利なマイク(USBマイク)
曲のイメージを固めるために自分の声を録音(仮歌録り)する際、スマホのマイクよりも少し良いマイクを使うと、制作のモチベーションが上がります。USBケーブル一本でPCやスマホに接続できるコンデンサーマイクなら、手軽にクリアな音質で録音が可能です。Audio-Technicaなどは入門機としても信頼性が高くおすすめです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 製品名 | Audio-Technica AT2020USB-X |
| 特徴 | プロ品質の音をUSB接続で手軽に。動画配信にも最適 |
| 公式サイト | Audio-Technica 製品ページ |
リズム確認に役立つメトロノームアプリ
曲作りにおいて、リズム(BPM/テンポ)を決めることは非常に重要です。同じメロディでも、テンポが少し違うだけで印象がガラリと変わります。アプリのメトロノームを使って、自分が想定している曲の速さがBPMいくつなのかを確認しながら制作を進めると、DAWに打ち込む際にもスムーズです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| アプリ名 | Smart Metronome & Tuner |
| 特徴 | シンプルで使いやすく、ドラム音など音色の変更も可能 |
| リンク | App Store (Smart Metronome) |
仕上がりが変わる作り方のコツと行き詰まり対策
いざ作り始めても、途中で筆が止まってしまったり、なんとなくパッとしない曲になってしまったりすることはよくあります。そんな時に役立つ、プロも実践しているちょっとしたコツや、スランプを脱出するための考え方を紹介します。順番通りに作ることにこだわらず、柔軟に進めることが完成への近道です。
サビだけ先に作ると全体が組みやすい
曲を最初(イントロやAメロ)から順番に作ろうとしていませんか?実は、曲の顔である「サビ」から先に作るのが、最も失敗の少ない方法です。サビは曲の中で一番盛り上がる部分であり、言いたいメッセージが詰まっている場所です。ここがしっかり出来上がれば、あとはそこに向かって盛り上げていくためのAメロ・Bメロを逆算して作ることができます。
もしAメロから作り始めて、だんだん盛り上げていこうとすると、サビに到達する頃にはエネルギー切れになったり、Aメロの方がサビより良いメロディになってしまったりという「頭でっかち」な曲になりがちです。「一番おいしい部分」を最初に確保してしまうことで、曲全体のゴールが明確になり、ブレずに最後まで作りきることができます。
タイトルを決めると歌詞がまとまりやすい
歌詞が書けない、何を書けばいいかわからないという時は、まず仮でもいいので「タイトル」を決めてしまいましょう。タイトルは曲のテーマそのものです。「夏の終わりの海」というタイトルを付ければ、波の音、夕暮れ、寂しさといったキーワードが自然と連想されます。タイトルという旗印を立てることで、そこから外れた余計な言葉を削ぎ落とすことができます。
また、タイトルはサビの決め台詞になることも多いです。有名な曲の多くは、タイトルが歌詞の中に登場します。タイトルを軸にして、そこから連想ゲームのように言葉を広げていくと、統一感のある歌詞が書きやすくなります。完成後にタイトルを変えても全く問題ないので、まずは「この曲は何について歌うのか」を一言で表してみましょう。
キーと音域を先に決めて歌いやすくする
せっかく良いメロディができても、実際に歌ってみたら「高すぎて声が出ない」「低すぎて響かない」となっては台無しです。特にメロディ先行で作る場合、楽器で音を探っていると、人間の声域を無視した広い音域のメロディを作ってしまいがちです。これを防ぐために、自分の歌える「一番低い音」と「一番高い音」を把握しておきましょう。
作曲を始める前に、使う「キー(調)」を決めておくとスムーズです。自分の出しやすい音域に合ったキー設定にすることで、無理なく感情を込めて歌える曲になります。カラオケで自分が歌いやすいアーティストの曲のキーを参考にするのも良い方法です。「歌う人」のことを考えて設計することが、良い曲作りの基本です。
行き詰まったら構成だけ先に埋める
「Aメロはできたけど、次が思いつかない」と止まってしまったら、一旦細部を作るのをやめて、曲の全体構成(設計図)を書いてみましょう。「イントロ4小節」→「Aメロ8小節」→「Bメロ8小節」→「サビ16小節」といった具合に、箱だけを先に用意してしまうのです。
こうして枠組みを作ると、「あとはこの8小節を埋めればいいだけ」というタスクに変わります。漠然と「曲を完成させなきゃ」と思うと気が遠くなりますが、「Bメロの8小節だけ考えよう」と限定すれば、心理的なハードルが下がります。空白を埋める作業に切り替えることで、脳がパズルのように解決策を探し始めてくれます。
作詞作曲は順番よりも完成まで運ぶ型が大事になる
作詞が先か作曲が先か、そこに絶対的なルールはありません。大切なのは、自分にとって「形にしやすい手順」を見つけることです。そして何より重要なのは、どんなに不格好でも「一曲完成させる」こと。未完成の名曲よりも、完成した駄作の方が、あなたの経験値として遥かに価値があります。まずは難しく考えず、手元のツールを使って、今日思いついた短いフレーズを記録することから始めてみてください。
