自分だけのオリジナル曲を作ってみたいけれど、何から手をつければよいか分からないという悩みは多いものです。作曲には決まった正解はありませんが、効率的な「順番」を知ることで完成までの道筋が驚くほどクリアになります。初心者でも挫折せずに曲を書き上げるための具体的な手順を紹介します。
曲作りの順番は「サビ起点」か「雰囲気起点」で決めると形になりやすい
曲の作り方には、大きく分けて「一番の盛り上がりから作る方法」と「全体の空気感から固める方法」があります。どちらが正しいということはなく、自分の感性が刺激される方を選びましょう。まずは、主な4つのアプローチについて、それぞれのメリットと具体的な進め方を詳しく解説していきます。
サビから作ると曲の核が決まりやすい
曲の顔とも言えるサビから作り始める方法は、最もポピュラーで成功しやすいアプローチの一つです。サビにはその曲で一番伝えたい感情やインパクトが凝縮されているため、ここがしっかりと決まることで、曲全体の方向性が自然と定まります。サビのメロディがキャッチーであれば、聴き手の耳に残りやすい強い曲になり、その後のAメロやBメロも、サビを引き立てるための構成として考えやすくなります。
具体的な進め方としては、まずは鼻歌や楽器で一番盛り上がるフレーズを探します。サビのメロディが完成したら、そのエネルギーに合わせてテンポやリズムを決めていきましょう。サビが華やかであればAメロは少し落ち着いたトーンにする、といった具合に、コントラストを意識しながら曲を広げていくことができます。この順番で作ると、後半になって「何を伝えたい曲か分からなくなった」という状態を回避しやすくなります。
また、サビ起点での制作は、SNSなどで短く切り取られる現代の音楽シーンとも非常に相性が良いです。最初からクライマックスを作ることで、リスナーを一瞬で引き込む力を備えた楽曲になります。サビが完成した時点で曲のポテンシャルが確認できるため、制作のモチベーションを高く保ったまま最後まで進められる点も大きな魅力と言えます。
コード進行から作ると全体が組みやすい
ピアノやギターなどの楽器を演奏する方におすすめなのが、コード進行から作る方法です。特定のコード進行をループさせながら、その上にメロディを乗せていくことで、曲の「土台」が安定した状態で制作を進められます。この手法の利点は、曲の雰囲気(明るい、切ない、おしゃれなど)を最初に固定できるため、メロディがバラバラな印象になるのを防げることです。
まずは自分が心地よいと感じる4小節から8小節程度のコード進行を選びます。王道進行やカノン進行といった定番のパターンを使うのも良いでしょう。そのコードの響きに身を任せながら、即興でメロディを歌ってみたり、鍵盤を叩いてみたりします。コードが決まっていることで使える音が限定されるため、メロディ作りで迷うことが少なくなり、スムーズに一曲の形を整えることができます。
特にバラードやジャズ調の曲など、ハーモニーの美しさを重視したい場合にはこの順番が最適です。また、DAW(音楽制作ソフト)を使ってトラックメイクをする場合も、コード進行を打ち込んでからアレンジを広げていく流れが一般的です。全体のリズムや伴奏の厚みを先にイメージできるため、編曲の段階で苦労することが少なく、初心者にとっても非常に合理的な作り方と言えます。
メロディから作ると歌いやすさが出やすい
コードや楽器の伴奏に縛られず、自由にメロディ(主旋律)だけを先に生み出す方法です。この作り方の最大のメリットは、人間の声にとって自然で歌いやすいラインを作りやすいことです。楽器で先にコードを鳴らしてしまうと、どうしても楽器の特性に引かれたメロディになりがちですが、鼻歌などで自由に生み出したメロディは、より直感的でエモーショナルなものになりやすい傾向があります。
歩いているときやお風呂に入っているときにふと思いついたフレーズを大切にし、それを起点に曲を膨らませていきます。メロディを先に作る場合は、その旋律が持つ「リズム感」を崩さないように後からコードを当てはめていく作業が必要になります。少し音楽理論の知識が必要な場面もありますが、その分、既存のパターンに囚われない独創的な楽曲が生まれやすくなるのが面白いところです。
この手法では、ボイスメモ機能をフル活用することが成功の秘訣です。断片的なメロディをストックしておき、それらをパズルのように組み合わせてAメロやサビを作っていきます。メロディの良さがそのまま曲の良さに直結するため、歌モノを作りたい場合には非常に強力なアプローチとなります。自分の声のレンジ(音域)に合わせて作れるため、無理なく歌える楽曲に仕上がります。
歌詞から作ると世界観がぶれにくい
伝えたいメッセージや物語がはっきりしている場合は、歌詞から作り始める「詞先」という方法が適しています。言葉が持つ独自のリズムやイントネーションがそのままメロディのヒントになるため、歌詞とメロディが密接に結びついた説得力のある楽曲になります。世界観が最初から固まっているため、曲の途中で雰囲気や構成がぶれてしまう心配がありません。
まずはノートやアプリに書きたいキーワードや短い文章を並べてみます。その言葉を実際に声に出して読んでみると、自然と抑揚がつき、それがメロディの種となります。例えば「悲しい」という言葉であれば低めの音、希望を感じる言葉であれば跳ねるようなリズム、といった具合に、言葉の持つイメージを音に翻訳していく感覚で進めます。これにより、聴き手に歌詞の内容がダイレクトに伝わる構成になります。
特にメッセージ性を重視するフォークや、ストーリーを語るような楽曲においては、この順番で制作されることが多いです。歌詞が先にあることで、サビでどの言葉を強調すべきか、Aメロでどのような状況説明をすべきかが明確になります。音楽的なテクニックに頼りすぎず、感情の動きに寄り添った曲作りができるため、表現者としての個性を出しやすい手法と言えるでしょう。
曲作りが進みやすくなるおすすめツール7選
現代の作曲において、便利なツールを使いこなすことは完成への大きな助けとなります。かつては高価な機材が必要でしたが、現在はスマートフォンやパソコン一つでプロに近い環境を整えることができます。効率的に曲を形にするために、ぜひ活用してほしいおすすめのツールを7つ厳選してご紹介します。
| ツール名 | カテゴリ | 主な特徴 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| GarageBand | 作曲用DAW | Apple製品に無料付属。初心者でも直感的に打ち込みが可能。 | Apple公式サイト |
| Cubase | 作曲用DAW | 世界標準の多機能ソフト。緻密な編集や本格的な録音に最適。 | Steinberg公式サイト |
| Chord AI | コード解析アプリ | 既存の曲や音からコードを自動解析。進行作りの参考に。 | Chord AI公式サイト |
| ボイスメモ | 録音ツール | スマホ標準アプリ。浮かんだメロディを逃さず保存。 | 各OS標準アプリ |
| Splice | ループ素材集 | プロ品質のドラムやベース素材が豊富。トラック制作を加速。 | Splice公式サイト |
| microKEY | MIDIキーボード | コンパクトで持ち運びやすい。打ち込み作業が劇的に楽に。 | KORG公式サイト |
| Notion | 作詞・メモ | 歌詞やアイディアを整理。デバイス間で同期していつでも書ける。 | Notion公式サイト |
作曲用DAW(GarageBand・Cubaseなど)
DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)は、作曲・編曲・録音・ミックスをすべて行うための司令塔となるソフトです。これが一つあるだけで、一人でバンド演奏のような豪華なサウンドを作ることができます。MacやiPhoneユーザーなら「GarageBand」が最初から入っており、楽器を弾けなくても「スマート楽器」機能を使えば自動で伴奏を生成してくれるため、初心者には最適です。
より本格的な制作を目指すなら「Cubase」などのプロ向けソフトも選択肢に入ります。これらは非常に多くの音色が内蔵されており、オーケストラから最新のダンスミュージックまで、あらゆるジャンルをカバーできます。DAWを使う最大のメリットは、作ったメロディを可視化でき、何度でも修正が可能なことです。全体の構成を画面で見ながらパズルのように組み替えられるため、一曲を完成させるまでのスピードが飛躍的に上がります。
コード進行作成アプリ(Chord系)
「なかなか良いコードが思いつかない」という悩みを解決してくれるのがコード進行支援ツールです。「Chord AI」やヤマハの「Chord Tracker」などのアプリは、曲作りを始めたばかりの人にとって強力な味方になります。既存の楽曲を解析してどのようなコードが使われているかを表示してくれるため、それを自分流にアレンジすることで、プロのテクニックを自分の曲に取り入れることができます。
また、アプリによっては特定のキーを指定するだけで、その曲に合うコードを提案してくれる機能もあります。これにより、音楽理論に詳しくなくても「次にくるべき心地よい響き」を簡単に見つけることができます。コード進行が決まれば、その上にメロディを乗せるだけで一気に曲らしくなるため、制作の初期段階での足踏みを解消してくれます。
ボイスメモ(メロディの保存)
意外と見落とされがちなのが、スマートフォンに最初から入っている「ボイスメモ」の重要性です。作曲家の多くは、素晴らしいアイディアを机に向かっているときではなく、移動中やリラックスしているときに思いつきます。そうした瞬間に浮かんだメロディは非常に儚く、すぐに忘れてしまうものです。ボイスメモを常に使える状態にしておき、一節でも良いので鼻歌を残す習慣をつけましょう。
保存した音声には「サビのアイディア」「切ないAメロ」といった名前をつけて整理しておくと、後でDAWに打ち込む際に非常に便利です。また、自分の声を客観的に聴くことで、メロディの強みや弱点に気づくこともあります。高品質なマイクを買う前に、まずはこの手軽なツールを徹底活用することが、アイディアの枯渇を防ぐ一番の対策となります。
メトロノームアプリ(テンポ確認)
曲作りにおいて、テンポ(BPM)を一定に保つことは基本中の基本です。メロディを作っている最中にテンポが揺れてしまうと、後でリズム楽器を入れたときに整合性が取れなくなってしまいます。「Smart Metronome」などの無料アプリを起動し、一定のリズムの中でメロディを考える癖をつけましょう。
テンポを変えるだけで、同じメロディでも印象がガラリと変わります。速くすれば軽快なダンスナンバーに、遅くすればしっとりとしたバラードになります。曲の方向性を決める際に、アプリで様々なテンポを試してみることは非常に重要です。正確なリズムを体で感じながら制作を進めることで、完成した楽曲のクオリティが格段に安定します。
ループ素材集(ドラム・ベース)
ドラムのリズムを一から作るのは時間がかかる作業ですが、「Splice」などのループ素材サービスを利用すれば、プロのドラマーが叩いたようなリズムパターンをすぐに曲に取り入れられます。数小節のドラムループを並べるだけで、いきなり「曲っぽさ」が出るため、メロディ作りが非常に楽しくなり、作業が進みやすくなります。
ベースやギターのフレーズなども豊富に用意されており、それらを組み合わせていくだけでバッキングが完成します。素材を使うことに抵抗を感じる必要はありません。素材をきっかけに新しいメロディが生まれることも多く、インスピレーションを刺激する道具として非常に優秀です。特にリズム主体のジャンルを作る場合には、欠かせないツールと言えます。
MIDIキーボード(打ち込みが楽になる)
マウスだけでDAWに音を打ち込むのは根気のいる作業ですが、MIDIキーボードがあれば、実際に鍵盤を弾きながら直感的に音を入力できます。KORGの「microKEY」シリーズのようなコンパクトなモデルはデスクでも邪魔にならず、鍵盤に不慣れな人でも音の高さを確認するために重宝します。
楽器をリアルタイムで演奏できなくても、ゆっくりとしたテンポで少しずつ入力していくことが可能です。キーボードを使うことで、メロディや和音を「体感」しながら作れるため、より人間味のある、音楽的なフレーズが生まれやすくなります。打ち込みのストレスを大幅に軽減し、曲作りの楽しさを倍増させてくれる周辺機器です。
作詞メモ用ノートアプリ(Notionなど)
歌詞作りや全体の構成を考えるとき、デバイスを選ばず同期できる「Notion」などのノートアプリが役立ちます。移動中の電車でスマホに書いたフレーズを、帰宅後にパソコンで大きな画面で見直すといった連携がスムーズに行えます。Notionは情報の整理に長けており、歌詞だけでなく、曲のタイトル案や制作スケジュール、参考にした楽曲のリンクなどを一箇所にまとめて管理できます。
曲作りは長期戦になることも多いため、バラバラになったアイディアを一つの場所に集約しておくことは完成への近道です。マインドマップのようにアイディアを広げたり、これまでに書いたボツ案をアーカイブしておいたりすることで、過去の自分が残したヒントをいつでも再利用できるようになります。
迷子になりやすいポイントを整えると完成しやすくなる
曲作りを始めても、途中で「何か違う」と感じて挫折してしまうケースは非常に多いです。それは多くの場合、曲の基礎設定が曖昧なために起こります。完成まで迷わずに進むためには、制作の各段階でいくつかのルールを決めておくことが大切です。制作をスムーズに進めるための、見直すべき重要な4つのポイントを紹介します。
キーとテンポを先に固定する
曲作りの初期段階で、キー(調)とテンポ(BPM)を明確に決めて固定することは非常に重要です。これらが決まっていないと、パートごとに雰囲気が変わってしまい、つなぎ合わせたときに違和感が生じる原因になります。特にDAWで制作する場合、後からテンポを大幅に変えると、オーディオデータが劣化したり、入力したフレーズの印象が変わったりするため、修正に多大な労力がかかります。
テンポを決める際は、自分が作ったメロディが一番心地よく聞こえる速さを探しましょう。また、キー設定は歌い手の音域に合わせることが基本です。自分で歌う場合は、一番高い音が無理なく出せる範囲に調整します。これらを最初にガッチリと決めておくことで、迷いなくアレンジやメロディ制作に集中できる環境が整います。基礎を固めることが、最終的な完成度を高めることにつながります。
AメロBメロは情報量を分ける
曲全体の展開をつけるために、Aメロ・Bメロ・サビの役割分担を明確にしましょう。よくある失敗は、すべてのパートで同じような情報量(音数や言葉の多さ)にしてしまい、平坦な曲になってしまうことです。基本的には「Aメロで淡々と状況を説明し、Bメロで感情を動かし、サビで爆発させる」という強弱のバランスを意識します。
Aメロは音数を抑えて静かに始め、Bメロでは少し音域を上げたりリズムを変えたりして、サビへの期待感を高めます。このように、パートごとに情報量を変えることで、聴き手は飽きることなく最後まで曲を聴き続けることができます。各パートを独立して作るのではなく、常にサビというゴールを意識しながら、そこまでの道筋をデザインしていく感覚を持つことが大切です。
1番と2番は展開を変える
一曲を5分程度の長さに仕上げる際、1番と2番をまったく同じ構成にしてしまうと、途中で聴き手が退屈を感じてしまうことがあります。2番では楽器の数を増やしたり、ドラムのパターンを少し変えたりするなど、1番とは異なる変化を加えることで楽曲に奥行きが出ます。歌詞の内容も、1番より2番の方がより核心に迫るような展開にすると、物語性が強まります。
また、2番のサビの後に「Cメロ(大サビ前の展開)」を入れるのも効果的です。ここで一度雰囲気をガラッと変えることで、最後のサビの盛り上がりがより強調されます。曲を最後まで完成させるためには、こうした構成の工夫が欠かせません。既存の楽曲を聴くときも、2番でどのような変化が起きているかに注目してみると、自分の曲作りに活かせるアイディアがたくさん見つかります。
仮歌を入れて歌い心地を確認する
インストゥルメンタルの曲でない限り、制作の途中で実際に「仮歌」を入れてみることは非常に重要です。DTMでの打ち込みだけで進めていると、人間が歌うには息継ぎの場所がなかったり、発音しにくい音の並びになっていたりすることに気づかないことがあります。自分で歌ってみて「歌いにくい」と感じる箇所は、メロディや歌詞を微調整しましょう。
完璧に歌う必要はありません。自分の声を入れることで、バックの演奏とのバランスや、メロディが伴奏に埋もれていないかといった客観的な確認ができます。仮歌を入れた状態で何度も聞き返すことで、曲の弱点が見えてきたり、新しいコーラスのアイディアが浮かんだりすることもあります。デジタルな作業の中に「生の声」というアナログな要素を一度通すことで、曲に命が吹き込まれます。
曲作りの順番は自分の得意と相性で変えると続けやすい
作曲の順番に絶対のルールはありません。サビから作るのが楽しいと感じる日もあれば、何気ない言葉のフレーズから広げたくなる日もあるでしょう。大切なのは、自分が一番ワクワクするポイントを起点にすることです。無理に苦手な順番で進めようとせず、その時の気分やインスピレーションに合わせて、アプローチを柔軟に変えてみてください。
いくつかの手法を試していくうちに、自分にとって最もスムーズに曲が完成する「得意パターン」が見つかるはずです。最初は完璧を目指さず、まずは短い曲を何曲も作り終えることを目標にしましょう。完成させた経験こそが、次により良い曲を作るための最大の糧となります。便利なツールを味方につけて、自分だけの音楽を形にする喜びを存分に味わってください。
