心を揺さぶるような「エモい」曲を作りたいけれど、自分でコードを並べてみるとなぜか平凡な響きになってしまう。そんな悩みを持つ方は少なくありません。実は、聴き手が切なさや懐かしさを感じる響きには、特定の共通点や仕組みがあります。初心者の方でもすぐに試せる、感情に訴えかけるコード進行の作り方を丁寧に解説します。
エモいコード進行が「それっぽく」ならない作り方
エモいコード進行とは、単に複雑な和音を使えば良いというものではありません。大切なのは「期待を裏切る意外性」と「心地よい緊張感」のバランスです。なぜその進行が心に響くのか、その理由を正しく理解することで、狙い通りに情緒的な雰囲気を作り出せるようになります。
エモく聞こえる響きの共通点
エモいと感じる響きの多くには、「不協和音の一歩手前」のような絶妙な濁りが含まれています。例えば、メジャーコードの明るさの中に、どこか寂しさを感じさせる音が混ざっている状態です。音楽理論的には「メジャーセブンス」や「アドナインス」といった、基本の3和音に少しだけスパイスを足した音がよく使われます。
また、共通点として「浮遊感」も挙げられます。どっしりと地に足がついた安定した進行よりも、どこか宙に浮いているような、次にどこへ行くか分からない不安定さが、聴き手の「切なさ」を刺激します。解決しそうでしきらない、そんなもどかしさがエモさの正体であることが多いです。
定番進行を少しだけ崩すコツ
「王道進行(IV→V→IIIm→VIm)」や「カノン進行」は非常に強力ですが、そのまま使うと「どこかで聴いたことのある曲」になりがちです。これを「それっぽく」見せるには、一部のコードを似た役割の別のコードに置き換える「代理コード」の手法が有効です。
例えば、最後を安定した「ド(I)」で終わらせるのではなく、少し濁りのある「ドメジャーセブンス(IM7)」に変えたり、マイナーコードをあえてメジャーに変えてみる(セカンダリードミナント)だけで、一気にドラマチックな表情に変わります。すべてを変える必要はありません。たった一箇所を意外な音に変えるだけで、進行全体が輝き始めます。
メロディーとの相性の見極め方
コード進行がどれだけ立派でも、その上で鳴るメロディーと喧嘩をしていては台無しです。エモい進行を作るときは、メロディーの「一番聴かせたい音」と、コードの「特徴的な音」が重なっているか、あるいは美しいハーモニーを作っているかを確認しましょう。
特に、コードに含まれるテンションノート(9thや11thなど)をメロディーでもなぞるようにすると、一体感が生まれてエモさが倍増します。逆に、メロディーがシンプルであれば、コード側で少し複雑な響きを持たせることで、飽きのこない深みのあるサウンドに仕上がります。
雰囲気が出ない原因と直し方
「なんだかダサい」「エモくない」と感じる最大の原因は、コードの移り変わりが「律儀すぎる」ことにあります。すべてのコードを同じ強さ、同じタイミングでジャカジャカと鳴らしてしまうと、繊細なニュアンスが消えてしまいます。
まずはコードを鳴らすタイミング(リズム)を少しずらしたり、音の強弱に波をつけたりしてみましょう。また、低い音(ベース)と高い音の距離を広げてみるなど、配置(ボイシング)を工夫するだけでも雰囲気は劇的に変わります。コードの「並び」だけでなく、「鳴らし方」にも目を向けることが解決の近道です。
エモいコード進行作りに役立つおすすめ本・ツール
自分の耳だけで探すのが難しいときは、プロの知恵が詰まった本や便利なアプリに頼ってみましょう。理想の響きを効率的に見つけるための厳選ツールを紹介します。
定番コード進行の使い方マニュアル(リットーミュージック)
ジャンルごとの定番進行とそのアレンジ方法が網羅されている、作曲のバイブル的な一冊です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 豊富な実例とともに、なぜその進行が機能するのかを解説。 |
| メリット | 楽譜が読めなくても、ピアノやギターの図解で理解しやすい。 |
| 公式サイト | リットーミュージック 公式 |
Hooktheory「Hookpad」(コード進行作成ツール)
ブラウザ上で直感的にコードを選び、メロディーとの響きを試せる作曲補助ツールです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 理論に基づいたおすすめのコードを提案してくれる。 |
| メリット | エモい曲の解析データが多く、参考にしやすい。 |
| 公式サイト | Hooktheory Hookpad |
iReal Pro(コード進行の伴奏練習アプリ)
入力したコード進行を、様々なスタイルで自動伴奏してくれるアプリです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | ジャズ、ポップス、ロックなど多彩なリズムで再生可能。 |
| メリット | 自分の作った進行を客観的なリズムの中で確認できる。 |
| 公式サイト | iReal Pro 公式 |
TheoryTab(曲のコード解析サイト)
世界中の有名曲のコード進行を視覚的に分析・視聴できる巨大なデータベースです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 人気曲の「エモい部分」がどのコードで作られているか丸分かり。 |
| メリット | 実際に音を聴きながら構成を学べる。 |
| 公式サイト | Hooktheory TheoryTab |
BandLab(無料で曲作りできるDAW)
スマートフォンやPCで、完全無料で音楽制作ができるクラウド型ソフトです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | インターネット環境があれば、どこでも録音や打ち込みが可能。 |
| メリット | 楽器を持っていなくても、内蔵音源ですぐに進行を試せる。 |
| 公式サイト | BandLab 公式 |
Cubase(本格的に制作したい人向けDAW)
世界中で愛用されている、多機能な本格音楽制作ソフトです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 「コードトラック」機能など、作曲を支援するツールが強力。 |
| メリット | 緻密な音作りができ、プロクオリティの楽曲が作れる。 |
| 公式サイト | Steinberg Cubase |
エモいコード進行を自分の曲に落とし込む手順
頭の中に浮かんだイメージを形にするには、闇雲に音を並べるのではなく、順序立てて構築していくことが大切です。世界観を決定づけるキーの選択から、細部の装飾まで、一歩ずつ進めていきましょう。
まずはキーと世界観を決める
曲のキー(調)は、その曲の「温度感」を決めます。例えば、明るい中にも少しの翳りが欲しいなら「Fメジャー(ヘ長調)」、都会的な夜の雰囲気なら「D♭メジャー(変ニ長調)」など、キーによって響きの個性が異なります。
まずは「夏の終わりの夕暮れ」「夜明け前の冷たい空気」など、具体的な情景をイメージしてみましょう。その世界観に最も近いと感じるキーを選び、基本となる3~4つのコードを並べることからスタートします。ここがしっかり決まっていると、その後のアレンジがスムーズになります。
ベースラインで切なさを作る
コード進行をエモくする隠れた主役は「ベース音」です。例えば、コードは同じでもベース音だけを半音ずつ下げていく(オンコードや分数コードを活用する)ことで、胸が締め付けられるような切ない「ライン・クリシェ」が生まれます。
また、あえてコードの主音(ルート)ではない音をベースに据えることで、安定感を崩し、物語性を引き出すことができます。ベースラインが滑らかに歌っている曲は、聴き手を自然に感情移入させる力を持っています。
セブンスやテンションを足す
基本の進行ができたら、和音の構成音を増やして「色」を塗っていきましょう。ただの「C」ではなく「CM7」にするだけで、音に透明感が加わります。さらに、9th(ナインス)の音を足すと、洗練された都会的な「エモさ」が宿ります。
ただし、すべてのコードを複雑にする必要はありません。大切な言葉がある箇所や、サビ前の盛り上げたいポイントに絞って、効果的にテンポの良い和音を配置しましょう。この「引き算」と「足し算」のバランスが、聴き手を飽きさせないコツです。
サビで広がる配置にする
AメロやBメロで溜めてきた感情を、サビで一気に開放させる構成を意識しましょう。ピアノやギターの演奏であれば、サビでは低い音から高い音まで広い音域を使う「ボイシング」に変えることで、視界が開けるような開放感を演出できます。
サビの始まりに、あえてトニック(I)ではなく、サブドミナント(IV)やマイナーコード(VIm)を持ってくるのも、エモい進行の定番テクニックです。「いよいよ始まった」という高揚感と、「まだ帰りたくない」という切なさを同居させることで、聴き手の心に深く残るサビになります。
きれいにまとまるエモいコード進行のまとめ
エモいコード進行を作ることは、自分の内側にある言葉にできない感情を、音という形に変換する作業です。響きの共通点を理解し、定番を少しだけ崩す勇気を持つことで、ありきたりではない「あなただけの響き」が生まれます。
HookpadやiReal Proなどの便利なツールを使いこなしながら、まずはキーとベースラインを整えることから始めてみてください。セブンスやテンションを隠し味のように添えれば、曲の世界観は驚くほど豊かに広がります。理論に縛られすぎず、自分の心が「いいな」と感じる響きを大切に、素敵な曲を形にしていきましょう。
